top of page

日系人社会に訪問してきました。

  • 執筆者の写真: yuhikai
    yuhikai
  • 5月1日
  • 読了時間: 5分

JICA協力隊員としてエルサルバドルに滞在している芝野です。JICAボランティアは、年間20日間まで任国外に旅行ができる制度があります。その使い方は様々で、諸手続きで日本に帰る隊員、同期隊員を訪問する隊員、近隣国を旅行する隊員などがいます。そこで、私は3月末から4月の中旬までの17日間を使ってペルー、アルゼンチン、ウルグアイの三か国に行ってきました。そのうち、アルゼンチン(首都ブエノスアイレス)で日系人社会を訪問したときの話をご紹介します。


【経緯】

JICAのボランティアは日系人社会に配属される人が相当数います。日系人社会とは、戦前~戦後の土地不足などを理由に海外移住した日本人の子孫(日系人)で構成されるコミュニティのことで、その多くの人々が南米、中米、米国に居住しています。エルサルバドルには日系人社会がなく、日系人社会に配属された同期隊員の活動を知るにつれて「日系人社会にはどのような人がいて、日々どのような活動をしているのか?」「現在直面している課題は何か?」「アイデンティティは?」などについて興味がわいてきました。そこで、今回の任国外旅行を利用して、アルゼンチンにある日系人学校とCOA(在アルゼンチン沖縄県人連合会)をケーススタディとして見学をすることにしました。


【日系人学校】

この学校の設立当初は移住したばかりの日本人子女とその子孫(日系人)に向けた学校でした。第二次世界大戦中は敵国として閉鎖を余儀なくされましたが、その後再開し、時代の変化とともに現地のアルゼンチン人の子供たちを徐々に受け入れるようになったそうです。

学校に入ると「こんにちはー!」と大きい声で挨拶をしてくれて、教育が行き届いているなと感じたのが第一印象です。その後に、センター長とお話をさせていただきました。教育機関として興味深かったお話は、4点。どれもさまざまな要因がありますが、アルゼンチンの社会背景を反映したお話でした。


①アルゼンチンには、普段まったく野菜を摂らず、肉しか食べない家庭がある。そこで、学校では少しでも野菜食べてもらうために、給食では生徒自身に食べたい野菜を選ばせている点(一皿に合わせて盛ってしまうと、一口も食べない子供たちがいるため)

②担任の先生が部活やクラブを担当することがない点

③迎えは保護者が来ることになっていて、祖父母だと名乗ったとしても、必ず保護者に確認をとる(絶対に引き渡さない)点→「学校内の問題=学校の責任、学校外の問題=全て保護者の責任」という考え方が根強い

④ほぼ100%の生徒が学校好きであり、日本で起こるようないじめがなく、学習が遅れがちな子供に対してでも生徒自身がお互いにサポートする雰囲気が醸成されている


①は学校独自の取り組みですが、②③④はアルゼンチンの学校における一般論だそうです。②と③については、日本で学校教育の問題点としてもよく上がることですが、アルゼンチンの方が教育機関とプライベート(家庭)を割り切ってうまく対処している印象を受けました。

④については、日本に比べて南米のオープンな人間関係、助け合いの精神が影響しているのか・・・と思いました。


センター長から、日系人社会の現状についても話を伺いました。センター長いわく、現在の課題は「継続性」であり、伝統やイベントを受け継いでくれる若者の存在が減りつつあることを懸念しているとのこと。各地で日系人会の存在があり、それぞれのイベントが行われているものの、積極的に参加・運営する人は年齢層が高めの傾向で、「日系人社会のこれからを支える若者(今、日系アルゼンチン人は三世から四世であり、有体に言えばほぼアルゼンチン人)がどのような役割を果たしていくのか」が大きな課題だそうです。


普段生活するうえでは「誰かがやらなければならないことだが、自分以外の誰かがやればよい」と考えてしまいがちですが、自分自身に重ねたときに「地元の町会の活動やイベントに積極的に参加しているか」と聞かれるとそういう訳でもないので、とても耳の痛い話でした。ただ、町内会の運営に関しては若者が当事者としてコミュニティで活動しようとする際に、同年代の仲間の存在と環境(若者が関与しやすい雰囲気)作りの大切さを感じた経験があります。日系人社会においては、さらに深刻な問題だろうと考えられます。

また、日系人社会の外に目を向けると「コミュニケーション方法や考え方を相手に合わせて柔軟に対応することができる(=日本とアルゼンチンの両方の良さを知っている)のが日系人である」という言葉も印象的でした。


【COA】 

学校訪問の後はCOAにお邪魔しました。沖縄からの日本人が多く移住した歴史がありますが、アルゼンチンも例外ではありません。訪問した稽古場はCOAのメインホールで、学校で聞いていたとおり、イベントの道具なども置かれていて、情報の発信拠点としての機能も兼ね備えているようでした。また、正面に会の旗とホールを囲むように県章と各市町村章があり、コミュニティの繋がりを重視し、県人会としてある種の誇りを持っていることが入った瞬間にわかりました。



うまく言葉に表現できないのが歯がゆいですが、学校の子供たちもしかり、話し方や礼儀など今の純日本人よりもずっと"日本人らしい"という印象を受けました。剣道の会員については、剣道をしているからというのも大きいと思いますが、日本国内に比べてコミュニティが狭く関わりが濃い分、日本的な考え方が残りやすいからかもしれません。


いずれにしても、アルゼンチンで剣道をするのはきっとこの日が最初で最後でしょう。「一期一会」「交剣知愛」このような言葉を肌で感じたとても幸せな時間でした。地球の反対側で、しかも旅行中に剣道をするとは思いもしませんでしたが、一生の思い出になることだけは確かです。



【最後に】

この日は日系社会デイとして考えていましたが、想像以上に実り多き一日となりました。

ご協力いただいた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。

コメント


bottom of page